近年、採用活動における「動画活用」は特別なものではなく、もはや必須ツールとなりました。採用サイトや求人票だけでは伝わらない企業のリアルな姿や社員の人柄を可視化できる採用動画は、Z世代を中心とする求職者にとって最も効果的な情報収集手段です。
本記事では、2025年の採用動画トレンドを俯瞰しながら、最新事例・効果・構成・配信・計測までを徹底解説。明日から動ける実務テンプレも付けています。
採用動画が注目される背景

採用市場の変化と「動画で選ばれる時代」へ
少子高齢化による労働人口減少、価値観の多様化、SNSによる企業理解の深化。求職者は“企業に選ばれる”ではなく、“自分で企業を選ぶ”時代です。特に20代前半〜30代のZ世代・ミレニアル世代は、求人検索よりもYouTube・TikTok・Instagramで企業を調べる傾向が顕著。動画は「第一印象」を決める顔になりました。
各社の公開データでも、採用動画導入後は応募率1.5〜2倍、内定辞退率の改善、早期離職の抑制といった成果が報告され、シナリオ設計や配信設計まで含めた採用マーケティングの中核へと進化しています。
「採用動画=ブランディングツール」へ進化
かつての採用動画は「説明会の補足」止まり。しかし今は、採用×広報×営業で横断活用する“ブランド資産”です。
- SNSやYouTubeでの拡散により企業イメージが向上
- 求職者だけでなく取引先・顧客・投資家にも好印象
- 社員の**エンゲージメント(誇り)**を高め、リファラル採用にも波及
2025年に注目すべき採用動画トレンド5選
トレンド①:リアル体験型「体験入社動画」
2025年の最大トレンドは、“応募者目線のリアル体験型”。体験入社動画は、応募者が入社した気分で1日を体験できるストーリー設計が特長です。
基本構成
- モデル社員(第三者)が会社を訪問
- 社員と会話しながら現場の空気を体感
- 実際の業務を疑似体験(安全配慮の範囲で)
- 1日の振り返りと感想で理解を定着
ポイント
- “演出よりも自然な会話”を優先
- 求職者が知りたい制度・評価・休暇実態を映像で
- 未経験でも働ける理由(教育・伴走・チーム支援)を可視化
従来のインタビュー中心よりリアリティと信頼性が高く、応募率・定着率の両面で効果を発揮します。
トレンド②:ショート動画・SNS動画の拡大
TikTok/YouTubeショート/Instagramリールなど15〜60秒の短尺が主戦場に。スマホ視聴×縦型フォーマットで“最初の接点”を量産します。
効くフォーマット例
- 「1分でわかる社員の一日」
- 「3つのキーワードで知る当社の魅力」
- 「新人のリアルボイス(入社理由・成長)」
実務ヒント
- 冒頭3秒で“顔(ロゴ/人)+仕事”を見せる
- テロップは8〜12文字で1枚0.8秒程度
- BGM・SFXは静かな職種ほど効く(タイピング音、足音などのアンビエント)
トレンド③:ストーリー×ドキュメンタリー構成
“情報の羅列”では刺さらない時代。挑戦・葛藤・成長・やりがいを描くドキュメンタリーが高完走率を実現します。
シナリオ例
- 若手が初受注にいたる物語(先輩の伴走も映す)
- チームで障害を乗り越える現場のやりとり
- 経営者×社員の価値観対談(理念の実装を語る)
※視聴完了率は情報説明型より約3〜4割高いケースが多いです。
トレンド④:データドリブンな「成果分析型動画」
再生回数・完走率だけでなく、応募率/内定承諾率/離職率との相関を追う企業が増加。サムネや冒頭カットのA/Bテスト、チャプター別の離脱点分析で次回制作の勝率を上げています。
見るべき指標
- クリック率(CTR):サムネ+タイトルの良し悪し
- 3秒視聴率:冒頭の掴み
- 30秒/完走率:構成テンポ
- 応募率・面談化率:CTAと導線
- 内定承諾率・定着率:“言っている通りか”の検証
体験入社動画は、どの体験パート(対話/実務/振り返り)が応募動機に効いたかまで追えるのが強みです。
トレンド⑤:生成AI・高画質映像で高品質×低コスト
生成AIでテロップ自動生成/要約/ナレーションが加速。編集の工数30%削減も珍しくありません。さらに4K/HDRで**“映画的質感”**が手の届く価格帯に。
ただしAIは“補助輪”。ストーリー設計と被写体のリアルが成果を決めます。
採用動画の効果とROI(費用対効果)

導入効果は数値でも明確です。
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効果項目 |
導入企業の平均成果 |
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応募率 |
1.5〜2倍 |
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内定辞退率 |
約30%減 |
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入社後定着率 |
約20%向上 |
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採用単価 |
15〜30%削減 |
特に体験入社動画やインタビュー+密着のハイブリッド構成は、**エンゲージメント(共感度)**が高く、応募後のモチベーション維持・定着に直結します。
トレンドを踏まえた採用動画の構成例(2025年版)
成功する動画の共通点は、順序ではなく“感情設計”。視聴者の心理曲線に沿って組み立てます。
- 導入(共感喚起)
「この会社、価値観が近いかも」と感じさせる人の表情×仕事の瞬間。
- 現場・社員紹介(リアルさ)
会話の“間”、視線、手元の動きまで捉え、空気感を共有。
- 仕事体験・挑戦(理解促進)
業務の流れ/ツール/評価が分かる短い“連続シーン”。
- メッセージ・理念(印象定着)
経営や上長が応募者に語りかけるトーンで締める。
NG例
- 5分超の情報過多
- 棒読み・台本感
- “企業目線”のみで応募者の疑問を放置
- 目的不明(応募促進?ブランディング?)
配信・運用で成果を最大化する実務ポイント
チャネル別ベストプラクティス
- 採用HP/LP:ファーストビュー直下に動画、CTAは**「30日以内の面談枠」**など期限付きに
- YouTube:サムネは顔+仕事+2語の訴求(例:挑戦/成長)、概要欄にタイムスタンプ+応募導線
- TikTok/リール:縦型9:16、冒頭3秒で人→仕事→笑顔、字幕は太め
- 求人媒体:動画サムネの差し替え頻度を月1回、季節企画(内定者の春・新人の夏)を運用
90日ローンチ運用例(テンプレ)
- 0–2週:目的/ターゲット定義、KPI設定、企画
- 3–5週:撮影(1–2日)+ショート素材も同時収録
- 6–7週:編集・A/Bサムネ作成
- 8週:HP/YouTube/媒体へ同時公開、広告少額出稿
- 9–12週:データ分析(3秒・30秒・完走・CV)、ショート2本追加、LP修正
事例:最新トレンドを取り入れた採用動画

① Amazon Japan
ブランドスペシャリスト職を題材に、リーダーシップ・プリンシプルやキャリア事例を密着形式で紹介。座談会で社員のキャリアや働き方を示し、仕事体験シーンでは取引先支援の流れを追体験できる構成です。膨大なデータ活用による戦略的な業務を通じて企業文化を伝えやすくしています。
② SmartHR
インサイドセールス職の1日を体験入社動画形式で紹介。社員同士の会話やインサイドセールス業務のリアル、独自の企業文化や働き方などを具体的に描き、カルチャーフィットや入社後の働き方をイメージしやすくする構成です。
③ 大東建託株式会社
営業職の1日を追体験できる採用動画を制作。訪問・提案・社内MTGなどの業務をリアルに表現し、未経験者でも仕事内容やサポート体制を理解しやすい構成にしています。
企画〜制作〜運用:現場で役立つチェックリスト
企画前(目的定義)
- 何を最大化? 応募数/ミスマッチ防止/内定承諾/定着
- ターゲット明確? 年齢/志向/職種
- 競合との差別化は? 仕事の社会意義/成長機会/人
撮影前(素材設計)
- **“リアルな会話”**を引き出す質問リスト
- 制度・キャリアを具体例で語れる社員
- 縦型用の別カメラ(スマホ可)準備
撮影当日(現場運用)
- 冒頭20秒は表情→仕事→笑顔の黄金パターン
- 移動・準備の合間も回してBロール確保
- 安全・個人情報の許諾書回収
編集(ポスト)
- 冒頭3秒×3案、サムネ×2案でA/B
- 字幕は8〜12文字/0.8秒目安、読みやすい太字
- CTAは「今月の面談枠」「内定者座談会申込」など行動型
公開・運用(PDCA)
- 3秒視聴率/30秒視聴率/完走率
- LP滞在時間/応募率
- 離脱点と良反応パートを次回台本へ反映
法務・リスクとアクセシビリティ
- 個人情報・映り込み:社内掲示物・端末画面に配慮、社外秘はぼかし
- 著作権・音源:商用OKのライセンス確認、二次利用可否を契約に明記
- アクセシビリティ:字幕は必須、色覚多様性に配慮した配色、音声なしでも理解できる構成
2026年以降のトレンド予測

- AIパーソナライズ動画(候補者属性でメッセージ自動差し替え)
- インタラクティブ採用動画(選択肢でストーリー分岐)
- メタバース見学×実写動画のハイブリッド
- 歩留まり率×視聴データの統合ダッシュボードで採用効果を最適化
採用のDX化が進むほど、動画は“情報伝達”から**“共感設計メディア”**へと進化します。
まとめ|採用動画トレンドの中心は「リアル体験型」へ
採用動画のトレンドは変化していますが、応募者に響く動画の本質には共通点があります。特に意識すべき3つのポイントがあります。
- リアルさと共感が最重要
求人票や文章だけでは伝わりにくい、仕事内容・職場の雰囲気・制度・文化などを具体的に示すことが、応募者の共感を得る鍵になります。映像を通して「働くイメージ」を体験できることで、入社後のミスマッチを抑える手助けになります。
- 短尺・マルチチャネル運用で接点を増やす
動画をSNSや自社サイト、採用ページなど複数のチャネルで活用することで、応募者が自分のタイミングで情報に触れやすくなります。短尺の動画でポイントを押さえたコンテンツは、理解度を高めると同時に離脱を防ぐ効果も期待できます。
- 応募者の体験をデザインできた動画が勝つ
単なる業務説明に留まらず、1日の業務フローや社員インタビュー、制度の具体的な活用例など、応募者が「自分ごととして働く姿を想像できる」体験を設計することが重要です。これにより、応募意欲の醸成や入社後の理解促進、定着率改善につながる可能性があります。
そして、この最前線の手法として注目されているのが、体験入社動画です。
体験入社動画は、応募前から企業のリアルな働き方を体験できる構成になっており、応募者にとって理解しやすく共感しやすいコンテンツとして活用できます。
日本経済新聞・各種メディアに取り上げられた話題の採用動画サービス
